不動産売却の譲渡所得税とは?短期・長期譲渡所得税の差や税制上の特例を解説
不動産を売却する際には、利益に対して譲渡所得税が発生します。この税金は、所有期間によって「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」に分かれ、それぞれ異なる税率が適用されます。売却のタイミングが数日違うだけで税額が大きく変わるため、売却時期を慎重に選ぶことが重要です。
さらに、マイホームの売却には「3,000万円特別控除」や、10年以上所有した場合に適用される「10年超所有軽減税率」の特例があります。これらを活用すれば、譲渡所得から最大3,000万円が控除され、税負担を大幅に軽減することが可能です。
目次
不動産売却時は譲渡所得税発生の可能性がある
不動産を売却する際には、譲渡所得税がかかることがあります。この税金を知らない方も多く、初めての不動産売却で後から知って驚くケースも少なくありません。譲渡所得税の概要は以下の通りです。
◇譲渡所得税とは
不動産売却では、売却で得た利益に対して譲渡所得税が発生します。譲渡所得税は、所得税と住民税に加え、復興特別所得税を含むその合計を指します。復興特別所得税は、東日本大震災からの復興を目的に課されるもので、2037年まで所得税の2.1%が適用されます。
不動産売却にかかる譲渡所得税は、分離課税方式で計算されます。この方式では、事業所得や給与所得などとは別に、不動産売却の利益に応じて税額が計算され、売却した翌年に確定申告で納税額が決まります。
◇短期譲渡所得と長期譲渡所得の違い
短期譲渡所得と長期譲渡所得の違いは、不動産を所有している期間の違いです。所有期間が5年以内の場合は短期譲渡所得となり、所有期間が5年を超えると長期譲渡所得となります。
短期譲渡所得と長期譲渡所得税では、税率が異なります。税金を安く抑えるためには、不動産を売却する前にどちらに該当するか把握しておくことが重要です。
◇なぜ短期の設定がある?
なぜ譲渡所得税に短期と長期の区別があるかというと、不動産バブル期に横行した「土地転がし」などの短期間での転売利益を防止するためです。このため、短期譲渡所得の税率は高く設定されており、現在もそのまま適用されています。
長期と短期の税率の差を知らないと損をする?
譲渡所得税額は高額になることもあるため、長期と短期の税率の差を知らないと、売却した日にちが数日違うだけで、税額に大きな違いが生じる可能性があります。こちらでは、それぞれの税率の違いと、それをうまく活用する方法について解説します。
◇長期と短期で税率にかなりの差がある
不動産を売却して利益が出た場合、その利益に対して譲渡所得税が課税されます。この税金は、不動産の所有期間に応じて「短期」と「長期」に分類され、それぞれで税率が大きく異なります。
・短期譲渡所得:売却した年の1月1日時点での所有期間が5年以下の場合に適用されます。税率は、所得税30%、復興特別所得税2.1%、住民税9%です。
・長期譲渡所得:売却した年の1月1日時点での所有期間が5年を超える場合に適用されます。税率は、所得税15%、復興特別所得税2.1%、住民税5%です。
このように、所有期間が5年を超えると、税率は短期譲渡所得の半分以下になります。
◇長期・短期を判定する5年における誤解
譲渡所得税の税率が変わる基準である「5年」という所有期間の判定は、意外と知られておらず、特に注意が必要です。この所有期間とは、取得日からではなく、譲渡した年の1月1日時点での期間を指します。
例えば、2019年4月1日に不動産を取得し、2024年5月1日に売却した場合、5年以上所有しているように思えます。しかし、実際は、判定基準は2024年1月1日となるため、短期譲渡所得の税率となります。
長期・短期別譲渡所得税の計算方法
実際に譲渡所得税はどのように計算されるのでしょうか。こちらでは、具体的な例を用いて、その計算方法をわかりやすく解説します。
◇譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)
譲渡所得の金額は、売却した土地や建物の売却額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。取得費とは、購入時の代金や手数料など、資産取得にかかる費用に、改良費や設備費を加えた金額です。
建物の取得費は、所有期間中の減価償却費を差し引いて計算します。取得費が分からない場合や、実際の取得費が売却額の5%より少ない場合は、譲渡価額の5%を概算取得費として扱えます。
譲渡費用とは、土地や建物を売る際にかかる費用で、仲介手数料、測量費、契約書の印紙代、立退料、また、建物を取り壊して土地を売る際の解体費用などが含まれます。
◇譲渡所得から特別控除を差し引いた金額に税率を乗じる
譲渡所得の計算が終わった後、まず特別控除を差し引きます。その後、所有期間に応じた税率をかけることで、最終的な譲渡所得税の金額が算出されます。特別控除については、次項で詳しく説明します。
◇長期と短期での税率の違い
税率は所有期間によって「長期」と「短期」に分かれます。所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得となり、高い税率が適用されますが、5年を超えると長期譲渡所得となり、税率が半分程度に下がります。それぞれ税率は、次の通りです。
長期譲渡所得税率:20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)
短期譲渡所得税率:39.63%(所得税・ 復興特別所得税30.63%、住民税9%)
長期保有の不動産売却時には特例が適用される
長期所有していた不動産を売却する際には、税制上の特例が適用されることがあります。これらの特例を知っておくことで、不動産売却をより有利に進めることが可能です。
◇利用できる特例は必ず活用しよう
長期所有の不動産を売却する際には、特別控除をうまく活用することで、売却利益を増やし、損失を防げます。特別控除は複数あり、併用できるケースもあるため、事前に確認しておくことが重要です。特に、京都のような歴史ある都市では、長期所有の物件が多いため、これらの特例を活用しない手はありません。
◇10年超所有軽減税率の特例
この特例は、売却時に10年以上所有していたマイホームを対象とした控除制度です。軽減税率は、令和元年の消費税引き上げに伴い導入された特定の税率を軽減する制度で、これにより3,000万円の特別控除後に譲渡所得の税率がさらに抑えられます。
10年超所有軽減税率が適用される場合、売却益が6,000万円を超える部分には20.315%、6,000万円以下の部分には14.21%の税率が適用されます。適用要件は、10年以上所有していたマイホームであることが条件で、3,000万円の特別控除と同様の条件が求められます。
◇3,000万円特例控除とは
売却する不動産がマイホームの場合、「居住用財産の3,000万円特別控除」が適用されます。この制度は、譲渡所得から最大3,000万円を控除でき、譲渡所得にかかる税金を大幅に節税できるものです。ただし、この控除を利用するには以下の6つの適用要件を満たす必要があります。
1. マイホームに該当する不動産であること。
– 現在住んでいる自宅である。
– 転居後3年目の年末までに売却している。
– 解体から1年以内に売却し、その土地を賃貸していない。
– 単身赴任の場合、配偶者が住んでいる自宅である。
2. 買主が親族や夫婦、同族会社などの特殊な関係者でないこと。
3. 売却した年の前年または前々年に、3,000万円の特別控除やマイホームの譲渡損失の損益通算や繰越控除を適用していないこと。
4. 売却した年の前年または前々年に、マイホームの買い換え特例や交換の特例を受けていないこと。
5. 他の特例(固定資産の交換特例や収用などの特別控除など)を適用していないこと。
6. 災害によって住まなくなった場合、3年以内に売却していること。
この特別控除は、短期譲渡所得においても適用されるため、ぜひ活用することを検討しましょう。また、住宅ローン控除と併用できないため、注意が必要です。
不動産を売却する際には、売却で得た利益に対して譲渡所得税が発生します。税率は不動産の所有期間によって異なり、短期譲渡所得と長期譲渡所得に区分されます。
短期譲渡所得は所有期間が5年以下の場合に適用され、税率は39.63%(所得税30%、住民税9%、復興特別所得税2.1%)と高く設定されています。一方、所有期間が5年を超えると長期譲渡所得に該当し、税率は20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税2.1%)と、短期譲渡所得に比べて半分以下に下がります。
所有期間が数日違うだけでも、税額に大きな差が生じる可能性があるため、売却のタイミングを慎重に選ぶことが重要です。所有期間の判定は、売却した年の1月1日時点での所有期間で決まり、5年以内か5年以上かが税率に影響します。
さらに、長期所有の不動産を売却する際には、税制上の特例が適用されることがあり、これを活用することで譲渡所得税の負担を大幅に軽減できます。代表的なものとして「3,000万円特別控除」と、「10年超所有軽減税率の特例」があります。
譲渡所得税の計算方法は、売却額から取得費(購入費用や改良費など)と譲渡費用(仲介手数料や解体費用など)を差し引いた額が基本となります。取得費が不明な場合や実際の取得費が売却額の5%未満の場合には、売却額の5%を取得費として扱うことが可能です。
このように、不動産の所有期間や税制特例の適用が譲渡所得税に大きな影響を与えるため、事前にこれらの知識を持って計画的に売却することが重要です。
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