農地を相続したときの課題とは?相続した農地の売却方法と活用の仕方
農地の売却は、一般的な土地と比べて多くの制約があり手間がかかるため、容易ではありません。その背景には、農業人口の減少と高齢化、さらには農地法による売却先の制限などの問題があります。また、農地売却には農業委員会の許可が必要で、専業農家以外への売却が難しいことも理由の一つです。
相続した農地を放置すると雑草や害虫の発生、不法投棄といったリスクもあり、最終的には農地の価値を損なう可能性があるため注意が必要です。
目次
農地が売却しづらい理由
農地の売却は、一般的な土地の売却とは異なり、さまざまな要因が絡み合って難しいとされています。農地が売却しづらい主な理由は、以下の2つです。
◇農業人口の減少と高齢化
日本の農業人口は、過去数十年にわたり減少の一途をたどっています。2010年には約260万人だった農業就業人口は、2019年には約168万人にまで減少しました。この減少は、農業従事者の高齢化と密接に関連していて、2010年には農業従事者の平均年齢が65.8歳だったのに対し、2019年には67.0歳に上昇しています。
このような高齢化の進行により、農業を続けることが難しくなり、農地の売却が増加しています。しかし、農業を継ぐ若い世代が少ないため、農地の需要が低下し、売却が難しくなっているのです。
◇売却先の制限
農地の売却には法律や規制が多く存在し、農地法により農地の売買には厳しい制限が課されています。例えば、農地をそのまま売却する場合、買主は専業農家であることが条件で、農業委員会の許可が必要です。また、農地を宅地や駐車場に転用する場合も、立地基準や一般基準を満たす必要があります。
これらの規制により、農地の売却は非常に手間がかかり、買主を見つけるのが難しいのが現状です。
相続した農地をそのまま放置するリスク
農地を相続した際、そのまま放置することには多くのリスクが伴います。農地は適切に管理されなければ、様々な問題が発生し、最終的にはその価値が大きく損なわれる可能性があります。以下では、農地を放置することによる具体的なリスクについて詳しく説明します。
◇雑草が生え害虫が発生する
雑草は農地の景観を損なうだけでなく、他の植物の成長を妨げる要因となります。さらに、雑草が生い茂ることで害虫が発生しやすくなります。
害虫は農作物に被害を与えるだけでなく、周辺の農地にも悪影響を及ぼす可能性があり、これにより、農地の価値が下がり、再利用も難しくなるでしょう。
◇不法投棄のリスクがある
不法投棄とは、廃棄物を適切に処理せず、無断で空き地などに廃棄する行為のことです。農地を放置しておくと、不法投棄がされやすいのも難点です。特に都市部に近い農地では、不法投棄が頻繁に発生することがあります。不法投棄されたゴミや廃棄物は、環境汚染の原因となり、農地の再利用をさらに困難にします。
また、不法投棄が発生すると、その処理には多大な費用と労力がかかるため、経済的な負担も増大します。
農地を売却するときは売却方法の選択が重要
農地は通常の土地とは異なり、特別な手続きや許可が必要となるため、適切な方法を選ぶことでスムーズな売却が可能となります。
以下では、農地を転用して売却する方法と、不動産買い取りを依頼する方法について詳しく説明します。
◇転用して売却する
農地を宅地や商業地などに変更してから売却する方法です。この方法を選ぶことで、農地のまま売却するよりも高い価格で売却できる可能性があります。まず、農地を転用するためには、農業委員会や都道府県知事の許可が必要です。
許可を得るためには、転用後の利用計画や環境への影響などを詳細に説明する必要があります。転用許可が下りた後は、土地の地目変更手続きを行います。この手続きが完了すると、農地は宅地や商業地として扱われるようになり、一般の不動産市場で売却することが可能となります。
転用後の土地は、住宅地や商業施設の建設用地として利用されることが多く、需要が高いため、売却価格も上昇する傾向にあります。ただし、転用には時間と費用がかかるため、十分な準備が必要です。また、転用が認められない場合もあるため、事前に専門家に相談することをおすすめします。
◇不動産買い取りを依頼する
農地の売却を迅速かつ確実に行いたい場合は、専門の不動産業者に買い取りを依頼する方法があります。不動産買い取りは不動産会社が直接購入するため、販売活動が不要で、売却までの時間が短縮できます。何より、売れ残る心配がありません。
農地の売却価格についても、専門の業者に査定を依頼することで、適正な価格での売却が可能です。複数の業者に査定を依頼し、比較検討することで、より高い価格での売却が実現するでしょう。
ただし、仲介と比較すると売却額は安くなり、市場価格の7~8割り程度になることは留意しておく必要があります。
農地を相続したら売却か転用がおすすめ
農地を相続した際、どのように活用するかは重要な決断です。売却や転用の選択肢があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。売却と転用の方法について詳しく解説します。
◇売却すれば遺産分割がスムーズに行える
不動産は、そのままの状態では分割が困難です。しかし、売却し現金化すれば、相続人が複数いる場合でも、農地を現金化することで公平に分配できます。
この方法を、換価分割といいます。現物分割では特定の相続人が農地を取得することになりますが、換価分割では売却金を相続人全員で分けるため、不公平感が生じにくいのがメリットです。
特定の相続人が不動産を相続し、他の相続人にその代わりに金銭などを支払う、代償分割を比較しても、換価分割には利点があります。代償分割は、評価額の違いから争いが生じることがありますが、換価分割では単純に売却金を分けるだけのため、評価を巡る争いが発生しません。
ただし、換価分割にもデメリットもあります。例えば、売却代金から不動産仲介手数料、税金などの諸経費が引かれるため、入ってくる金額が期待より少なくなることもあります。売り急ぐと不動産が安値でしか売れない可能性もあるでしょう。
さらに、不動産を所有していると将来的に価値が上がったり、賃貸活用して利益を得られたりする可能性がありますが、売却するとその可能性が失われます。
それでも、誰も対象遺産の相続を望まない場合や、公平に相続したい場合、代償金を支払えない場合、相続税の納税資金にしたい場合などは、換価分割がおすすめです。
◇転用すれば利益が得られる
農業をする予定がない場合は、農地を転用し土地を有効活用することも選択肢の一つです。農地転用の具体例としては、アパートやマンションなどの賃貸住宅用地として活用する方法があります。
その際は、事前に農地転用ができるか確認が必要です。農地転用が可能な土地は、第2種農地と第3種農地です。第2種農地は生産力の低い小集団の未整備農地や市街地近郊で市街地として発展が望める農地が該当します。第3種農地は市街地の区域または市街地化の傾向が顕著な農地で、転用が比較的容易です。
農地転用の手続きには、農地法による基準を満たし、知事などの許可を得る必要があります。転用が認められれば、賃貸住宅用地として活用することで安定した収益を得られます。
また、農地を転用して、駐車場や太陽光発電施設として活用することも可能です。京都で不動産売却を検討されている場合は、参考にしてみてください。
不動産は維持費がかかるため、相続した不動産を売却するケースはよくあります。しかし、農地の売却は、一般的な土地とは異なり、多くの制約や手間がかかるため容易ではありません。主な要因として、農業人口の減少と高齢化、さらに農地法による売却先の制限が挙げられます。
農地を相続したまま放置することには、さまざまなリスクが伴います。雑草や害虫の発生により農地の価値が損なわれるだけでなく、不法投棄のリスクも高まります。特に都市部に近い農地は不法投棄の対象になりやすく、環境汚染により再利用も難しくなるでしょう。
売却が難しい農地も、工夫次第で売却しやすくなります。具体的な方法は、転用して売却する、不動産業者に買い取りを依頼するなどです。
転用して宅地や商業地に変更して売却することで、高い価格での売却が可能となりますが、転用には時間や費用がかかり、事前に農業委員会や知事の許可が必要です。不動産業者に買い取りを依頼する場合は、販売活動が不要で売却が迅速に進む一方で、仲介よりも売却価格が低くなる点に注意が必要です。
農地を相続し農業を行わない場合は、売却か転用がおすすめです。農地を売却すれば、遺産分割がスムーズに行え、現金化することで公平な分配が可能になり、評価額の争いを避けられます。農地を賃貸住宅用地や駐車場、太陽光発電施設として転用することで活用し、安定した収益を得ることが可能です。
ただし、売却した際は、売却代金から諸経費が引かれるため、最終的に受け取る金額が少なくなることがあります。土地活用も、成功するとは限らないため、慎重な検討が必要です。
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